本研究では、高性能短波長量子細線レーザの作製を目的として、AlGaInP III-V族半導体とMgZnCdSe II-VI族半導体を用いて研究を行った。以下に得られた成果を述べる。 1.GaInP量子細線レーザを作製し、特性評価から量子細線の効果及び作製条件について検討した。GaInP量子細線の成長にはGaPとInPの交互成長による自己形成法を用いた。ここでは、交互成長の周期と基板の傾斜角依存性に着目しながら量子細線の作製条件について検討した。その結果、交互成長時の各層厚を1.2分子層以上とすることにより量子細線構造が形成され、また基板傾斜角が5°の場合に量子細線構造の形成が促進されることが分かった。また、これらの技術を用いてGaInP量子細線レーザを作製し評価した結果、室温でのパルス電流駆動において257A/cm^2の低しきい値電流密度で750nm帯赤色光のレーザ発振が得られた。さらに世界で初めての室温連続動作に成功した。 2.短波長の黄から青色域の量子細線レーザを作製するために、InP基板上のMgZnCdSeについて検討した。ここでは先ず、MgZnCdSeの結晶成長と特性の評価を行った。その結果、低温15Kでのフォトルミネッセンス測定ではエネルギーバンド端からの発光が観測され、これより15KでのMgZnCdSeの禁制帯幅とMg組成の関係式が得られた。また、MgZnCdSeの反射率の測定から屈折率を見積もり、屈折率のMg組成依存性を初めて明らかにした。さらにド-ピング特性について調べ、Cl(塩素)を用いることによりn型伝導性制御が可能であることを示した。以上の技術を用いてMgZnCdSeの量子細線発光素子を自己形成法により成長した。作製した素子を77Kにおけるパルス電流駆動により評価を行った結果、この材料系では初めて、波長585nmのオレンジ色の発光を得た。
|