本年度は、RF励起ラジカル窒素を用いた分子線エピタキシ-(RF-MBE)法によるGaN結晶の高速度成長条件を把握した。一般にMBE法は熱処理無しにp型結晶が得られ、層厚制御性に優れる反面、高品質な結晶成長には、極めて低い成長速度(0.5〜0.02μm/h)が要求され、デバイス作製上の大きな障害であった。 本研究では、基板にサファイアc面を用い、基板温度575℃においてGaNの成長を行った。RF入力電力は450W、窒素流量は4.0sccm一定とし、Gaセル温度を変えて成長速度を0.2から1.4μm/hと変化した。微分干渉顕微鏡観察では、成長速度0.7〜0.9μm/h近傍の試料において鏡面がえられ、これよりも低成長速度側、高成長速度側においてはいずれも表面の荒れが観察された。X線回折半値幅は成長速度の増加に伴い単調に減少し1.2μm/hで最小となり、さらに成長速度を増加すると再び半値幅が増加した。室温におけるホトルミネッセンス測定では、成長速度0.4〜0.9μm/hの試料においてバンド端からの発光が確認され、例えば成長速度0.7μm/hの試料では半値幅87meVと良好な光学特性を示した。このように0.7〜1.2μm/hという高成長速度で高品質GaN結晶が得られることを見出した。これはRFラジカル窒素源から高効率で活性窒素が供給された効果であり、RF-MBE法が窒化物デバイスの作製に有望な方法であることが示された。 また、結晶成長中に水素ガスを導入する等の技術を用いることにより、柱状の結晶成長を促進し、直系200〜80nm程度の独立した極微柱状結晶の成長が可能であることを新たに見出し、さらに、直系80nm程度極微柱状結晶を高密度かつ均一に制御する技術を把握した。この技術を利用することにより、極微量子閉じ込め構造の作製が可能であり、将来の窒化物半導体デバイスの高機能、高性能化に大きく寄与するものと期待される。
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