研究概要 |
本研究では,まず本槽実験を行い魚群行動に関する時系列データを取得した.つぎに,その行動を予測するためのモデルをニューラルネットワークを用いて構築した.最後に,実際の魚群行動の予測を行うことによりモデルの妥当性を確認した. 1.(水槽実験によるデータの取得)水槽実験には,小型淡水魚のタイリクバラタナゴを用いた.この魚の行動をビデオテープに記録し,画像処理より水槽内における位置に関する時系列データを取得た.その結果,水槽の壁に沿って遊泳する典型的な行動パターンや,泳いだり,止まったりを繰り返す複雑なパターンなど多様な実験結果が得られた.これらの行動を誘起する原因として,場所や時間などの影響が考えられるが,そのことを明確にするのは今後の課題である. 2.(魚群の速度を予測するためのモデル)ニューラルネットワークを用いて予測モデルを構築した.まず,予測の目的を1尾の魚の速度と設定し,ニューラルネットには3層の階層型構造,学習法としてバックプロパゲーション法を用いた.入力変数には現時点の速度成分と壁からの距離,出力変数は1時点後の速度成分を採用した.その結果,ほぼ正確な予測ができることがわかった. (魚群の位置を予測するためのモデル)つぎに,2尾の魚の位置を予測する問題を考察した.このとき,魚はある周期をもって泳いだり,止まったりを繰り返し,特徴のある時系列パターンを示した.そこで,時系列情報を構造内にもつElman型ニューラルネットを用いて,この問題を扱った.その結果,学習データとして多様な行動パターンを含むものを用意すれば,得られたニューラルネットワークの予測性能は高いことがわかった.
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