1.はじめに 今まで、光CTの実現のためにいくつかの試みがなされてきたが、いまだ実用的な成功例は報告されていない。これは生体内構造物により発生する透過光の散乱現象がノイズとなり、組織の正確な観察が困難な事と、また組織における透過光の吸収が信号光強度の低下をまねく事に起因する。そこで超高出力赤外発光ダイオードを照射光源に使用することで、従来は極めて高価な光検出器が必要だった測定でも、一般的なCCDカメラで可能な事が示されたのでこれを報告する。 2.実験とその結果 まず、比較的実験の容易なヒト指部を被測定対象として、近赤外光による生体透視の可能性を調べた。照射光源として超高出力赤外発光ダイオードを用い、定電流駆動回路によって直流点灯を行なった。この赤外光をヒト左手第2指(成人男子32歳)に照射し、被測定対象から透過した光をCCDカメラによって検出した。この結果、光電子増倍管の様に高価で特別な装置を使用せずに、散乱像の観察を可能にしている。 上記の測定システムにより観察された画像の血管部分は、ヘモグロビンの強い吸収により暗画像として見ることができた。しかし同時に、この画像は生体組織自身による強い散乱の影響を受けているため、コントラストが良くない事も示された。 3.まとめ 超高出力赤外発光LEDを照射光源に用いて、生体透過画像の観察を行なった。実験の結果から、透過光強度の向上に対してある程度の効果が認められた。しかし、散乱の影響により十分なコントラストを持った画像を得ることが困難な事もわかった。
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