研究概要 |
決定論的で単純な数理モデルで記述できる現象であるにもかかわらず、複雑で予測不可能な不規則的な現象であるカオス現象を制御することをカオス制御という。カオス制御をその目的に応じて大別すると2種類に分類することができる。一つは、カオス現象が望ましくないと考えてカオス信号を除去すること、今一つは、カオス応用の観点から、積極的にカオス信号を生成することである。本研究では、従来のカオス制御で用いられていた線形制御理論から脱して、非線形適応理論を応用することにひとつの独自性があり、上記2つの目的のどちらの場合でも達成することができる適応制御理論の構成を目指している。 研究の前半では、非線形制御対象に対する適応制御理論として、ごく最近提案された全く新しい概念に基づく2種類の適応制御理論(適応バックステッピングと高階調整法)のロバスト化の研究を行い、本目的に対する、理論上の基礎と数学的な道具を準備した。これらの結果は、6つの論文として研究発表の項目で明らかにしている。 つぎに、これらのひとつの結果であるロバスト高階調整法をカオス制御に用いた適応的カオス制御方式を提案し、カオス追従・カオス除去に利用可能なことを、Duffing system, Chua'S Circuit, Lorenz Syetem等のカオス系の制御を等して実証した。さらに、実際上重要な有界外乱混入時においても、初期の目的が達成されることを理論上示し、その数値例を行い確認した。 本研究では、つぎの2つの仮定を用いている。(1)カオス系の状態が入手可能であること;(2)制御入力が各状態に直接影響を与えるようにできること。実際の系では、特に(1)の仮定は満足されないことが多く、現在この点について研究中である。また、秘匿通信システムの構成にも適用できると考えている。
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