本年度は、(1)波動伝搬の解析と推定アルゴリズムの開発、(2)応答波形のノイズ除去およびパルス化、(3)杭の形状推定システムの開発をおこなった。 (1)波動伝搬の解析と推定アルゴリズムの開発では杭を弾性体細棒と仮定して杭の波動方程式の解より、杭の波動伝搬モデルを導出し、これの逆問題を解き、杭の振動波形から杭の形状を求める計算アルゴリズムを開発した。本アルゴリズムのシミュレーション実験により、振動波形から杭の形状の推定が可能であることが実証されたが、他方、ノイズにより大幅な推定誤差を生じること、打撃パルスが正確なインパルスでなくなまった波形の場合に推定誤差が生じる事が判明した。 (2)応答波形のノイズ除去およびパルス化では形状の推定誤差を減少させるため、応答波形のノイズの除去とパルス化のため、応答波形に対しWalsh変換をおこない不要な高周波成分をカットした後に逆Walsh変換をおこなうことで、応答波形中のパルスを抽出しノイズを除去する手法をおこない、シミュレーション実験および模型実験を通じて良好な結果を得た。 (3)杭の形状推定システムの開発では以上の手法を用いて杭の形状推定システムを構築した。ピット杭を横置きにし土をかぶせて状態で測定した杭の応答波形に対して形状推定実験をおこなった結果、おおむねの杭の形状を知ることが出来たが、正確な寸法を推定するまでにはいたっていない。また、実際の地盤に施工した杭に対する形状推定実験においては、正しい形状が得られない事が多かったが、杭の概形がほぼ正しく推定されたケースもあり、原因は不明である。 今後は、形状が正しく推定できない原因の究明をおこなうと共に、より精度の高い推定を目指す必要がある。
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