| 研究概要 |
本研究では,載荷履歴がRC部材の損傷の累積挙動に及ぼす影響を検討するために,定変位繰返し試験,二段階変位繰返し載荷試験およびランダム変位載荷試験を実施し,主として,先行変位での損傷を一定とした場合の後続変位での損傷の累積挙動を,先行・後続変位の大小関係に着目して検討した。また,得られた結果をもとに,筆者が既に提案している残存耐力に基づく損傷評価指標の修正を試み,ランダムな載荷履歴への適用性について検討した。得られた主な結果を以下に示す。
1.定変位繰返し載荷では,繰返し数が増加すると残存耐力の低下率が増加し,載荷変位が大きいほどその割合は大きくなる。
2.二段階変位繰返し載荷における後続載荷過程では,同一変位の定変位繰返し載荷過程と比べて,後続変位が先行変位より大きい載荷パターンでは若干大きく,また,後続変位が先行変位より小さいパターンではかなり大きく残存耐力が低下する。
3.二段階変位繰返し載荷での損傷の累積挙動に関しては,後続載荷過程での損傷指標の値を,同一変位の定変位繰返し載荷過程における損傷指標の値に補正係数を乗じて求めることにより,実際の損傷レベルを推定することが可能となる。
4.地震荷重のようなランダムな載荷履歴の場合,載荷変位の変化による補正係数を考慮して求めた損傷指標の値は,実際の損傷レベルをかなり過大評価する傾向がある。これは,実際の地震荷重は繰返し数が比較的少なく,本研究で実施した二段階変位繰返し載荷の場合と繰返し回数がかなり異なるためと考えられる。ランダム載荷の場合は,載荷変位の変化による補正係数を考慮しない方が実際の損傷レベルとの整合性がよく,これについては今後の検討が必要である。
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