研究の主な目的は次の(1)と(2)であった。 (1)飽和粘土の挙動を水〜土骨格連成の弾塑性有限変形境界値問題の解として捉らえる立場で、特に境界条件が整備された三軸圧縮試験を題材に、載荷速度の違いと関連した破壊前後の分岐解析、ひずみの局所化と進行性破壊の追跡を行うこと。 (2)カムクレイモデルに下負荷面モデル(橋口ら、1990)を新たに組込むことにより、正規圧密粘土のみならず超過圧密粘土の安定・不安定挙動を説明すること。 (1)については、カムクレイモデルを用いて、供試体の変形・「強度」の非排水条件下での軸ひずみ速度依存性が、供試体内の間隙水の移動の程度の違いによる供試体の壊れ方(分岐モード)の違いで説明できた。また、分岐後、供試体内部での土要素の破壊の進展の様子を明示した。 (2)については、まず第1に、カムクレイモデルの自然な拡張により、一般に負の後に正のダイレイタンシー特性を有するとされる超過圧密粘土(あるいは軟岩)の挙動(非排水試験では、正の後の負の過剰水圧の発生のこと、排水試験では圧縮から膨張に転ずる時の軸ひずみよりも後で軸差応力がピークを迎え「残留状態」を示すこと)を見事に説明できた。また、ダルシー則と連立して解く時、実験で得られるような応力〜ひずみ挙動に及ぼす載荷速度依存性がほぼ説明でき、また荷重劣化(不安定挙動)の計算が安定して行えることを示した。さらに、(2)で示される吸水軟化現象によって、泥岩のスレ-キング現象すなわち、「小さな荷重による超過圧密粘土の正規圧密粘土化」が生じると示唆した。
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