都市間道路及び鉄道・空港などの交通施設整備が地域に及ぼす影響評価を考えるような場合には、従来のリンク属性を主としたネットワーク分析手法では不十分であり、主要な都市施設あるいはネットワーク上の任意のノードからのアクセシビリティが重要な指標となる。現代のような複雑化した交通システムにおけるアクセシビリティを解析するためには、リンクのみならずノードにも重みを持たせたネットワークとして交通ネットワークを取り扱い固有の交通ネットワークの構造の中で、ネットワークの変化に対応し、交通結節点が影響を及ぼす範囲の変化を予測したり、ネットワーク内での交通結節点の関係を評価する枠組みが必要である。本研究ではこの枠組みを交通ネットワーク構造分析と呼び、リンク及びノードが重みをもつ交通ネットワークを対象に、交通プロジェクトの実施に伴う空間変形がどのようにノード特性に影響するのか、そしてその空間的範囲はどこまでのなのかを分析する手法を提案し、これを視覚化する方法を開発した。 研究の第1段階にあたる交通ネットワーク構造分析の構築は以下のプロセスで行った。まず、本研究を進める上で基礎となる日本全国を対象とする多手段の交通ネットワークをGISを用いてモデル化した。次にアクセシビリティをグラフ理論の分野で主に研究が行われてきた中心度関数理論を用いてアクセシビリティ関数として一般化し、交通ネットワーク構造を前提とした各交通結節点の地域関連結性の計測を行った。この計測結果をネットワークの各属性を距離とする平面に展開することで、交通ネットワーク構造と地域間連結性のの関係を視覚化した。この手法には、既に著者らが構築している時間地図作成手法を応用している。 交通プロジェクトの影響評価では、交通プロジェクトが及ぼす影響範囲と効果の大きさをプロジェクト実施前後の交通結節点のアクセシビリティ関数値の変化によって計測し、先に述べた方法を用いてプロジェクトが交通ネットワーク構造に及ぼす変化とそれによってもたらされる地域間連結性の変化を視覚化し評価を行った。本研究で提案したGISを用いたシステム利用することにより、各交通プロジェクトの及ぼすネットワーク上での効果の特徴や各種のプロジェクトの組み合わせや代替性についての検討を容易にすることが確認できた。
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