限界状態設計法における荷重・耐力係数の設定に際しては、荷重や構造特性に含まれるばらつきを適切に評価する必要があり、確率統計的手法の適用が不可欠である。本研究では、ばらつきが大きく設計上重要な荷重である地震荷重について検討を行った。 まず、地震荷重のモデル化に際しては、対象建物敷地の周辺に発生した過去の地震に関する歴史資料および敷地で実際に観測された地震動記録を基に、非定常確率過程として入力地震動のモデル化を行った。建物のばらつきに関しては、都市の中に存在する建物の群としての耐力・剛性のばらつきに着目し、これらの確率モデルを作成した。これにより、新耐震設計法の以前と以後の建物の耐震性能の違いを、応答曲面法を用いた確率統計的手法により定量的に明らかにした。 次に、仙台・東京・大阪を対象に、終局強度型の耐震設計法により設計されたモデル骨組の耐震信頼性解析を行い、場所による耐震性能の違いや、設計法のもつ耐震安全性のレベルについて検討した。解析の結果は、50年・100年・500年間の建物の最大地震応答変形の超過確率として定量化した。その結果、建物の地震危険度の上限値が、建物の周期・耐用年限によらず比較的安定した値であることを明らかにした。 以上の研究成果により、地震荷重係数の設定に際しては、対象とする建物敷地や各限界状態における設計のクライテリアにより係数の値を適切に設定する必要があることが明らかになった。また、本研究により提案された解析手法は、荷重係数値の具体的設定やその妥当性を判断するための現行の設計法とのキャリブレーションに適用が可能である。
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