研究概要 |
近年,室内空調設計の最適化等の建築環境工学における主要問題の解明に,CFD技術の適用が一般化しつつある。今後,従来の研究成果を整理統合する際の障害として,従属変数により異なるグリッドを組み合わせ使用する従来のスタガード・グリッド方式では,コーディングが繁雑になることが挙げられ,早急に共通解法の開発を行う必要があると考えられる。以上の背景により,本研究では,従来のスタガード・グリッドに替わるレギュラー・グリッド・システムについて検討を行った。第一段階としてSIMPLE法を解法の基礎として開発されたRieらによる圧力内挿法をHSMAC法に適用した場合の諸問題について検討した。その結果,レギュラー・グリッドでは計算格子点における速度成分の連続条件の充足レベルが時間刻み幅によって影響を受けるが,その影響は概して軽微に止まり,解全体の精度には顕著な影響を与えないこと,必要に応じて計算全体の時間刻み幅と,連続条件式と圧力ポワソン式の重みを決定する別の時間スケールを導入することで,後者に依存する解が一意的に得られることを明らかにした。この結果を踏まえて,解法を一般曲線座標系における問題に拡張し,計算格子の交差角度が90度と大幅に異なる場合に置いても安定に収束解が得られることを確認し,以上の成果を発表した(裏面参照)。以上は層流の範囲に限定したものであるが,その後k-εモデルを導入した乱流について机上検討を継続して行っており,レギュラー・グリッドでは圧力仕事の保存に関し,計算格子点の風速成分に関する連続条件のエラーに比例した数値誤差が混入すること,中心差分表現では移流項についての積分的保存の成立すること,平均流から乱流エネルギーへのエネルギーカスケード過程で,数値レベルでエネルギー保存される差分近似法の存在することを明らかにした。現状では後半の検討に時間を要したため,具体的な計算事例についてのケーススタディは行っていないが,今回の結果より共通プラットフォーム解法の可能性について充分実現可能との感触を得たので,協力関係にある研究機関を含めて研究組織を拡大し,レギュラー・グリッド・システムに基づく汎用計算コード開発のための基礎検討を開始した。
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