本研究の目的は、オブジェクト指向による建築モデルを拡張し、協調設計のための建築CADシステムに利用できる枠組みを提案することである。 協調設計システムにおいては、特定のメディア(設計図書)の表現慣習に依存しない知識としての建築モデルが存在するという前提が不可欠であり、建築モデルの枠組みとして「建築設計のための知識表現モデル・日本建築学会計画系論文報告集443号」において提案されたAKMをベースに、ネットワーク分散環境のための基本的枠組みとしてOMGが提唱しているCORBAの技術を取り入れた。特に試験的な実装を通じて、AKMが分散アプリケーション構造におけるプレゼンテーション/セマンティック分離の階層にマップできることを確認した。 分散環境における建築モデルは、建築デザインを構成する建築要素について、それが本来保持すべき属性とそのパースペクティブ(見識)に固有な表現上の属性を、オブジェクトとして切り分けれることで、実現した。分離のメカニズムでは、プレゼンテーションオブジェクトを通じて、セマンティックの属性が変更されると、ORBは関連するプレゼンテーションオブジェクトにネットワークを通じてIDLに従った変更メッセージを送信するために、セマンティックが保持する最新の属性値を、常にそれぞれのプレゼンテーションに反映させることが可能になった。 以上、ネットワーク分散環境内でAKMにおける建築オブジェクトを共有できることを確認し、これらの成果を第18回情報システム利用技術シンポジウム(日本建築学会)において発表した。
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