研究概要 |
空間の表記法として提案されたスペースブロックを、立体化した人間環境系に焦点を当てた設計方法として展開を図った。理論的側面としては、生活のある場面を表すまとまりをもった単位としてスペースブロックを分節することで、設計行為を、不連続な構成要素の関係としては表せない濃密な記号を扱うスペースブロックレベルと、スペースブロックという不連続な記号間の関係を扱うスペースブロックネットレベルに分けて考えられることがわかった。この二つのレベルが、設計ツールとしてスペースブロックを実現するために、模型やインタラクティブなコンピュータグラフィックス、あるいはスケッチや図面、さらには文章などのメディアやそれらの組み合わせを用いる場合に保持されることで、実現メディア間を容易に変換しながら設計することが可能になる。 スペースブロックを利用する実践的側面としては、学生を対象に設計のワークショップを開き、その中で具体的方法を探った。ワークショップに利用する道具として、2.5mキューブの3,4,5個からなる規格化したスペースブロックを考え、プラスチック板で100分の1スケールで作成しベーシックスペースブロックと呼んだ。ワークショップは、一つのベーシックスペースブロックを用いる場合と、複数を用いる場合とを行った。その結果、スペースブロックレベルとしては、制約の強い形をしたベーシックスペースブロックを用いることで、空間の形とその使い方についての想像力が刺激されること、外部空間と内部空間を等価に考えやすいことが効果として見られた。また、透明と白(不透明)のベーシックスペースブロックを用いると、内部/外部、パブリック/プライベートなど様々な対立軸をあてはめて考えやすいこともわかった。スペースブロックネットレベルとしては、普通に平面図や断面図を利用していたのでは考えられないような複雑に立体化した空間が、アクセスや外部との関係などを把握しながら作り出せるという効果がみられた。
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