研究概要 |
La_2Fe_2S_5良質試料の合成を検討した。合成方法は次であり、主に溶融および焼結温度の影響を研究した。(1)出発原料はLa_2S_3およびFeSとした。これらをLa_2Fe_2S_5組成に坪量しめのう乳鉢で混合。(2)混合粉を油拡散ポンプにより10^<-4>Torr以下に排気した石英ガラス管中に封入。(3)電気炉を用いて800〜1200℃で焼結および溶融。(3)の溶融および焼結操作では1100℃以上で溶解し、La_2Fe_2S_5相とLaFeS_<3-δ>相および未同定相が生成した。1100℃未満では、複雑なX線回折パターンを持つ未同定相が生成し、La_2Fe_2S_5相は得られなかった。1100,1125,1150,1175および1200℃の各温度で溶融し、その温度からの急冷および徐冷を行ったが、La_2Fe_2S_5相の単相は得られなかった。また、原料中の硫黄を化学量論組成より1%,2%および5%過剰に添加した原料を出発として同様の操作を行ったが、単相は得られなかった。粉末X線回折図形より、目的物質であるLa_2Fe_2S_5相が最も多く生成した条件は次であった。硫黄過剰添加量1%,1200℃,4h溶融後室温まで急冷。この操作で得られた試料について、4端子法による直流電気伝導度および熱起電力を測定した。室温での伝導度は2.4×10^<-2>Scm^<-1>であり、その温度依存性は半導体的であった。伝導の活性化エネルギーは約0.2eVであった。熱起電力の符号が正であったことから、この物質はp型の半導体であることがわかった。これらのことをまとめて、La_2Fe_2S_5の電子構造は、伝導帯底部を構成するFe3d軌道よりも価電子帯上部を構成するS3p軌道の逆格子空間における分散が大きいと考察した。
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