ゾル-ゲル反応プロセスに、マトリックスゲルを構成する原子と水素結合可能なポリマーを表面グラフトした活性炭やカーボンブラック等の吸着能を有する無機粉体を添加することによって、これらの無機粉体のマトリックスゲル中への分散性の向上、含有量の制御、及び無機相と高分子相との相分離の防止といった課題を解決して、均一組成の加工性に優れた柔軟性を有する無機-有機複合ゲル吸着材の合成を目的とした。ポリマーグラフト化無機粉体の添加量や添加時期、あるいは反応系のpHが、複合ゲルの構造に及ぼす影響、また、グラフトポリマー鎖の種類(構造)・分子量・グラフト量が無機粉体の分散性や最大添加量に及ぼす影響、さらには、ポリマーグラフト化無機粉体の添加量が、複合ゲルの機械的特性や製膜性・曳糸性に及ぼす影響について、未処理の無機粉体を用いた場合と比較することによって究明した。本研究で得られた成果は、以下の通りである。 1.アルカリ触媒下よりも酸触媒下において、均一な複合ゲルが生成した。また、無機粉体の添加量が多くなる程ゲル化の速度は速くなるが、得られる複合ゲルは脆くなり、加工性に劣る。 2.ポリマーグラフト化無機粉体を添加した場合は、未処理の粉体を添加した場合よりもゲル化速度が遅くなるが、均一組成で柔軟性のある複合ゲルが得られた。加工性とのバランスから、ポリマーグラフト化無機粉体の最適添加量は、金属アルコキシドに対して7wt%であり、最大でも10wt%である。 3.グラフトポリマー鎖の影響については、種類や分子量の違いよりも、グラフトした絶対量に依存し、グラフト量が多くなる程ゲル化速度は遅くなったが、均一な組成の複合ゲルが得られた。 4.金属アルコキシドの種類については、金属原子の違いよりもアルコキシドの価数による影響が顕著である。なお、複合ゲルの比表面積、細孔分布、吸着特性については、順次評価していく予定である。
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