研究概要 |
本研究は,インピングジェットリングディスク電極(IJRDE)および電気化学的水晶振動子秤量法(EQCM)を腐食研究へ適用するものであり,ハロゲンイオンを含む水溶液中における金属のアノード反応機構の解析を行うことを目的として行われた.通常の電気化学的手法では試料電極に流れる電流のみを測定するが,これに対して,本研究では溶解するイオンの定量・価数分析及び電極の重量変化を同時に求めるもので,反応機構の解析がより多くのパラメーターにより行うことができる. 第一に,IJRDEの電極及びセルを作製し,最適測定条件を求めた.さらに,流体力学的層流条件を拡散限界電流の流速依存を検討することで確認した.本研究では,試料電極として銅を用いたが,溶解する1価および2価の銅イオンのリング電極によるin-situ定量法を確立した. 第二に,EQCMによる銅電極のアノード溶解機構の解析を行った.EQCMを適用することで,電極の酸化過程における,電極の微少質量変化をリアルタイムで追跡した.その結果得られた反応パラメーターにより,塩化物イオンを含む溶液中での銅のアノード溶解機構を明確にした. 第三に,IJRDEにより銅のアノード反応機構を検討した.臭化物イオンを含む酸性溶液中において,アノード分極曲線は明確なタ-フェル電位域と限界電流域を示し,タ-フェル勾配は約60mV/decであった.臭化物イオンは,タ-フェル電位域では反応次数2で,また限界電流域では反応次数1で,銅の溶解速度を加速した.その他,溶液のpHおよび流速依存性を調べることで,臭化物イオンを含む酸性溶液中での銅のアノード溶解機構を検討した.
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