研究概要 |
近年,医療の現場では治療後のQuality of Lifeが重視されるようになってきており、治療方法はより侵襲の少ない方向へと向かい、医療器具の小型化が進んでいる。医用分野においてさらにミクロ化・高機能化を実現させるための要素技術の一つとして表面の精密加工・微細処理技術の開発が要望されている。 本研究では分子の自己組織化能と高分子へのレーザー照射によるラジカル発生能に着目し、材料表面に予め任意の分子を構造化させて吸着させ、これにレーザー照射し材料表面に発生したラジカルの高反応性を利用して、任意の微細領域に吸着分子を化学的に固定化できる新しい材料表面加工・処理技術を開発した。この技術は人工臓器の生体適合性表面の設計、バイオセンサーの機能性の付与、さらにマイクロマシンなどの超微細構造体製作のための基礎技術となりうると考えられた。具体的に結果を示す。(1)両親媒性分子あるいはバイオコロイド分子を吸着させることにより単(多)分子膜を高分子表面に形成できた。(2)作成した膜吸着高分子にエキシマレーザーを照射すると、高分子表面にラジカルが発生し,吸着膜へのラジカルの連鎖移動、続く再結合反応により共有結合が形成でき、吸着分子を基材高分子表面に固定化できた。(3)親水・疎水,アニオン・カチオン性など異成分、異種類の分子の固定化によるパターン化が可能であった。これらにより高度に制御された表面微細加工・処理技術が開発できたと言える。本技術は医用材料などへの生体適合性の付与、バイオセンサーへの機能性の付与など各分野へ応用することが可能と考えられる。
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