微細な硬質粒子を傾斜分布させたアルミニウム基の粒子分散材料を創製することを目的として、遠心鋳造装置の鋳型内で回転している融点近傍のAl溶湯に高液相線温度のAl-遷移金属合金溶湯を混合する新しいプロセス(複合鋳込み遠心鋳造法)を試みた。過包晶Al-Cr系合金をモデル材料として、初晶粒子の粒径と分布を制御するためのプロセス変数(合金組成、各溶湯の質量比など)の影響を調査した。また、硬度試験および耐摩耗試験により、得られた複合材の傾斜機能特性および耐摩耗特性を評価した。主な結果を以下に要約して示す。 (1)複合鋳込み遠心鋳造法により、外周部に微細な金属間化合物の分布する領域(微細粒子複合層)を持つ遠心鋳造管を作製することができる。 (2)Al溶湯とAl-遷移金属合金溶湯の質量比を変化させることにより、金属間化合物のサイズや体積率の水準を大きく変えることなく、複合層の厚さのみを独立に制御することができる。 (4)Al-遷移金属合金溶湯としてAl-10%Cr合金を用いた場合、微細粒子複合層内の金属間化合物の分散状態は良好である。一方、Al-20%Cr合金を用いた場合には、金属間化合物の著しく密集した島状集団が独立して存在する不均一な分布となる。 (5)表面複合層では外周側が最も硬く内周側ほど低くなる傾斜機能的な硬さ分布が見られる。Al-10%Cr合金を使用した複合鋳込み遠心鋳造材では、外周部の硬さは内周部のマトリックス単相領域の約2倍となる。 (6)複合鋳込み遠心鋳造材は、同じ混合組成の通常材と同程度の耐摩耗性を有する。また、通常の遠心鋳造材では、摩耗面の円周近傍の金属間化合物が脱落して欠損を生じるのに対し、複合鋳込み遠心鋳造材では均一な摩耗挙動を示す。
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