得られた研究成果は以下の3項目である。 1.燃焼着火条件の定量化 本研究で対象とするマグネシウム-ニッケル系合金は生成熱が比較的小さいため着火が容易ではなく、着火か否かはその金属相互の粒子径の組み合わせ、混合方法、圧粉方法に大きく依存することが予備実験で明らかになった。特に混合方法は乾式よりも、湿式、さらに超音波使用のホモジナイザーが効果的であった。 2.燃焼合成における固相-固相反応の直接観察とそのモデル化 総合的な燃焼合成の数学的モデルを開発するためには、燃焼速度を正確に評価する必要がありそのためには反応(2Mg+Ni=Mg_2Ni)モデルの構築が重要であった。なぜならば、興味深いことに反応界面(reaction front)は熱伝播の面(front of heat wave)と同一ではなく少し遅れて伝播していくことが報告されているからである。しかしながら一般に現状では近似的に1次反応の形で整理している報告が多く十分ではない。これは粒子径が通常10-100ミクロン程度と小さく、隣接する粒子の接触点という極めて微視的領域において反応が生じ超高温となるために、その現象の観察が困難であり、反応機構の解明が遅れる原因となっている。 3.着火実験と移動現象論に基づく解析 高純度不活性ガス(アルゴン)中で円筒形試料の一端を着火し、熱電対により軸方向の非定常温度変化をデータ・アクイジション・システムを介して高速スキャン測定するとともに、石英窓から着火、燃焼、伝播、製造完了の一連の現象を高速ビデオ撮影した。また、着火前後の熱伝導率、比熱、物理的特性(密度、細孔径、気孔率等)を各種機器により測定した。得られた成果を移動現象論に基づき数式により表現し、スーパーコンピュータを駆使し数値解析を行った。
|