固体電解質型燃料電池の燃料極特性の検討を行った。電極の高性能化にはガス拡散抵抗の減少が必須である。拡散抵抗を減少させる燃料極材料の作成法と、材料の強度について検討した。また、メタンや一酸化炭素ガスを窒素ガスで希釈して燃料として用いた。 (1)材料の検討 ニッケル/ジルコニアサ-メットを種々の出発原料から調整した。粉末法として、酸化ニッケル粉末とYSZ粉末をメノウ乳鉢で混合し、高温電気炉がで焼成した。ゾルゲル法では、硝酸ニッケルとジルコニウムブトキシドをイソプロピルアルコール中で合成した。また溶液法として、硝酸ニッケルと硝酸ジルコニルをイソプロピルアルコール中で溶解させた後、析出させて作った。粉末法で作成した試料の粒径は不均一で大きいのに対し、ゾルゲル法や溶液法で調整した材料は粒径が非常に小さく均一で、微細な電極構造となることを走査型電子顕微鏡写真から確認した。この構造は拡散速度を著しく向上させた。また、補助金で購入した加熱装置により、実験中に試料上に析出物があることを観察した。実験後にエネルギー分散形X線分析装置で元素分析を行った結果、サ-メットのジルコニウム上に炭素の析出を認めた。電極上の炭素析出はガス通路を塞ぎ、また反応面積を減少させることから性能を劣化させる原因となる。研究の結果、炭素析出の抑制には燃料中に水蒸気を10%以上混入させることが有効であった。 (2)材料の強度 電極を密な構造から多孔質構造にすることでガスの拡散速度を向上させたが、同時に空間率の増大により、機械的強度を低下させた。運転と停止の操作を繰り返したところ、10回以内にサ-メットにクラックが入ってしまった。ニッケルが酸化と還元を繰り返すことで膨張と収縮を繰り返すためであると考えられた。信頼性向上のためには材料の強度について今後検討を加える必要がある。
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