流体力学操作によって発生する時間的にミリ秒オーダーの分子的熱非平衡場とエネルギー伝達速度が速い光を用いて、熱から従来の輻射光とは異なる光エネルギー(レーザー光)への直接変換技術(熱発振型レーザー)が可能となれば、エネルギーの高密度・高効率輸送を行うことが期待される。 本研究では、炭化水素高温高圧燃焼を用いたガスダイナミックレーザーのレーザー発振の発振効率の高効率化への指針を得るために、レーザー発振強度に大きく影響すると考えられる燃焼圧力等の諸条件がCO_2ガスダイナミックレーザーの発振条件と発振出力に及ぼす影響について実験的および理論的の両面から検討を行い、以下の有用な知見を得た。 1.非定常伝播燃焼器を用いて高圧CH_4/air燃焼を行い、燃焼ガスを断熱膨張させ、その流れ場に10.6mmのCO_2レーザー光を用いて増幅度(微小信号利得)を測定し、これによって分子的熱非平衡状態を確認した。ゲイン値は燃焼圧力によって若干の変動が認められたが、およそ2〜4m^<-1>であった。 2.CH_4/air燃焼で得られる高温・高圧ガスを想定し、この断熱膨張過程における並進回転運動、振動回転運動のエネルギー吸収・放出過程について、分子運動論・量子論に基づいた三温度モデルを用いる理論的検討を行い、断熱膨張によって非平衡状態が生じるレーザーキャビティー内の圧力と出力の相関を明らかにした。 3.1)によるゲイン値の実験結果2)の理論的検討に適用して本研究で用いた装置のレーザー出力を推算した結果300〜1200Wであると予想された。
|