ガス中の微粒子に蒸気や他の粒子が凝縮・凝集して粒子が成長する現象は、気相法による粒子材料の製造、環境大気中の2次粒子の生成過程などと関連して重要である。本研究の理論的検討ではまず、粒子の生成、成長が起こる空間における滞留時間と温度履歴を求めるために、不均一なガス流速と温度の分布を、基礎式であるガスの連続の式、運動方程式、エネルギー方程式を離散化して数値計算で解く計算手法を導いた。次に、この計算で得られた結果を、粒子の原料となる蒸気ならびに粒子のガス流れ、拡散による輸送を表す移流拡散方程式に考慮してやはり数値的に解いた。この方程式は、蒸気およびその化学反応で生じるモノマーの粒子への凝縮、粒子同士の凝集、凝集で生じた不整形の凝集粒子の焼結によって、粒子が時間的に成長しながら形態を変化させていく過程を解析できるポピュレーションバランス式でもある。 一方実験では、まず壁面を電気炉で加熱した管型粒子成長装置を製作し、これに導入した金属有機蒸気の熱分解反応で生じるモノマーから、粒子が生成し、成長する過程を検討した。ここでは酸化チタン粒子の生成を検討の対象とし、種々の条件下で得られた反応管出口での粒径分布を、静電分級器と凝縮核計数器を用いて測定した。また生成した粒子を別の加熱管で再加熱し、粒子の成長時に形態を変化させる焼結の影響についても検討した。その結果、反応管出口で凝集体としてのサイズが数nm〜数百nmの粒子が生じることがわかり、さらに蒸気量、反応温度に対する凝集粒子ならびに一次粒子のサイズ分布の変化が実験的に明らかにされた。さらに実験値にみられた傾向は、計算結果によってうまく説明され、凝縮、凝集による微粒子の成長過程が理論的に評価できる可能性が示された。
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