研究概要 |
バイオプロダクトは,種々の分子量の物質を含んでいるため,多成分系の中から分子分画により目的の生体高分子を効率的にしかも活性を維持したまま分離・精製する必要がある. 本申請課題では,耐圧性,耐薬品性に優れたpH応答性限外ろ過膜を開発し,溶液のpH変化に対する分画特性の変化を利用して,分子分画により多成分混合液からの生理活性物質の効率的な分離・精製を目的として種々検討を行い,以下のような結果を得た. 1.pH応答性限外ろ過膜の調製法として,プラズマ重合法と相変換による湿式法を検討した.プラズマ重合法では,基板膜として酢酸セルロース膜を用いた.酢酸セルロース膜に,空気存在下,100Wで1分間プラズマ照射を行い,基板膜細孔表面に過酸化物を生成させた後,メタクリル酸モノマーの水溶液に浸漬し,50℃で24時間反応させグラフト重合を行った.湿式法は,ビニルピリジンとアクリロニトリル共重合体の溶液を,ガラス板上に流延し,所定温度で所定時間溶媒を蒸発後,水中に浸漬し,脱溶媒,ゲル化を行った. 2.膜の分離特性を検討した.標準物質として,種々の分子量のポリエチレングリコール混合物を用いて限外ろ過を行い,各pHにおける溶質排除率を測定した.膜の分子分画特性は,供給液のpHにより可逆的に変化することがわかった. 3.溶質の分子量と各pHにおけるその溶質の排除率との関係を定式化することにより,pH応答性限外ろ過膜の分子分画特性を定量的に評価した.また,湿式法によるpH応答性限外ろ過膜の製膜時における溶媒の蒸発温度および溶媒蒸発時間と分子分画特性を表わすパラメータとが相関することを示した.
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