研究概要 |
真空断熱膨脹を利用した質量分析計を用いてゼオライト等の多孔性結晶体の合成時に用いられる有機結晶化剤の水溶液中での状態を測定した。検討した有機結晶化剤はフォージャサイト型ゼオライト合成に用いられるクラウンエーテル類とゼオライトの類縁化合物であるアルポ合成に用いられるトチアルアミン類であった。クラウンエーテル類の中では18-クラウン-6-エーテル,15-クラウン-5-エーテルおよび12-クラウン-4-エーテルについて検討した。ゼオライトの合成が認められた18-クラウン-6-エーテルおよび15-クラウン-5-エーテルではクラウンエーテル1分子に水1分子が配位したクラウンエーテル水和クラスターが最も多く生成した。一方、ゼオライトの合成が認められなかった12-クラウン-4-エーテルでは水和せずクラウンエーテルのみで存在する場合が多かった。これらの結果から、ゼオライト合成においてはある有機化合物が結晶化剤として作用するためには水とのクラスターを形成しなければならないことが示唆された。また、トリアルキルアミン類の中ではアルポ-21の合成に用いられるトリメチルアミンおよびアルポ-5の合成にトリエチルアミンについて検討した。トリメチルアミンでは水分子のみで形成されるクラスターにトリメチルマミン1分子が配位した水和クラスターが比較的多く生成し、トリエチルアミンではトリエチルアミン1〜4分子からなるクラスターに水が1分子配位した水和クラスターが比較的多く生成し、トリメチルアミンの水和クラスターの方が嵩高いことがわかった。アルポ-21とアルポ-5の細孔径を比較するとアルポ-5の細孔径の方が大きいことから嵩高い水和クラスターを用いると大きな細孔径を持つ多孔性結晶体が合成できることが示唆された。
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