抗体生産とエネルギー代謝について定量的に解析し、抗体生産に関係する代謝経路を把握するために、培養細胞の主要なエネルギー源であるグルコース、グルタミンを制限基質とした連続培養を行い、比増殖速度のY_<ATP>、抗体比生産速度に及ぼす影響を検討した。その結果、比増殖速度の増加に伴う抗体比生産速度の低下は、比増殖速度の上昇に伴う、細胞増殖に使われるATP量の増加、および抗体生産に使われるATP量の減少、が原因であると推測された。次に、ATPの利用についてより詳細に解析するために、細胞内代謝モデルを構築し、各代謝経路のfluxを推定した。その結果、グルコース律速、グルタミン律速の両方において、比増殖速度の増加に伴いピルビン酸とリンゴ酸を結ぶ経路、オキサロ酢酸とホスホエノールピルビン酸を結ぶ経路およびTCA cycle中のリンゴ酸とオキサロ酢酸を結ぶ経路のfluxが減少していることが分かった。またこれらのfluxの減少に伴いATP比生産速度が減少していた。よって比増殖速度の増加に伴うATP比生産速度の減少、抗体生産に使われるATPの割合の低下、が抗体比生産速度の減少に大きく影響していると推測できた。しかしATPの比生産速度は上記の3つの代謝経路によって調節されているものと考えられるため、これら3つの経路fluxを太くする培養を行い、ATP比生産速度を上昇させることができれば、高い比増殖速度においても抗体比生産速度を上昇させることが可能であると考えた。そこで上記の3つの経路のfluxを増加させ、抗体生産を上昇させる目的で、これらの代謝経路に関係するピルビン酸を強化したグルタミン律速での連続培養を行い、抗体比生産速度を上昇させることができた。
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