研究概要 |
最近、イオンチャンネルを始めとする細胞膜に存在するタンパク質に関する研究が注目を集めている。細胞膜のタンパク質は、脂質が共存するため直接カラム法よる分離・精製が容易でなく、さらに精製のために共存する細胞膜のリン脂質を除去するとその機能を失ってしまったりするので、細胞膜から直接タンパク質を安定な相へ抽出するなど、細胞膜のタンパク質を効率よく分離・精製する方法の開発が望まれている。本研究は、細胞膜のタンパク質を連続的に抽出できる界面活性基を粒子表面に持つ担体の開発と担体のタンパク質分離プロセスへの応用を目的とした。まず、本年は担体の作製に焦点を絞り、粒子表層へ効率よくかつ均一に界面活性基を導入するために、界面活性基を持つ開始剤を合成し、単分散な粒子径を有するポリスチレン粒子の表層に界面活性基を導入した。成果の概要を以下に示す。(1)開裂後の連鎖反応の防止や反応制御の点から、反応性が比較的低く、開裂後に界面活性基を持つ2分子のラジカルを与える対称なアゾ系の開始剤を、4,4‘-Azobis(4-cyanopentanoic acid)とMonomethylpoly(ethylene oxide)のエステル化反応により合成した(以下、開始剤と略す)。構造等の確認は^1HNMRスペクトルを測定することにより行った。(2)膨潤法によりこの開始剤を粒径が単分散であるポリスチレン粒子に吸着させ、ついで70℃で5時間放置し開始剤を開裂・グラフト反応させることにより、界面活性基を粒子に導入した。反応後の粒子をテトラヒドロフランに溶解し、高速液体クロマトグラフィーを用いて界面活性基を定量したところ、約70%の開始剤由来の界面活性基が粒子を構成するポリスチレン鎖に均一に導入されており、本研究で行った界面活性基を持つ開始剤を開裂・グラフトさせる方法により多数の界面活性基を粒子に均一に導入できることが分かった。
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