研究概要 |
有機溶媒中の基質に対し,フラビン補酵素類縁体をメディエーターとして適用することにより,効率の良い電子伝達システムの構築について検討を進めた。本研究では,(1)これまで我々が検討を勧めてきた,有機溶媒に可溶なフラビンメディエーターを含むシステムを,本年度はダブルメディエーター化してさらに効率の良い電子伝達を可能にするシステムの構築,ならびに(2)フラビン類を固定化した修飾電極の有機溶媒中の基質に対する電子伝達作用,について検討した。 1.有機溶媒に可溶なリボフラビンテトラアセテート(RF)をメディエーターとし,これに可視光を照射するとアセトニトリル(MeCN)中でベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの電解酸化反応が進行する。この系にさらにパラベンゾキノン類(Q)を共存させると,電解酸化の速度が顕著に増大することを見出した。この系の反応機構は,基質の酸化反応に対してRFとQがダブルメディエーターとして作用し,QがRFの再生を顕著に促進することが明らかになった。 2.水溶性のフラビンモノヌクレオチド(FMN)アニオンをポリピロール(PPy)重合時にドープさせ,FMN-PPy修飾電極を白金基板上に調製した。この電極は過塩素酸存在下のMeCN中でPPyとFMNのレドックス活性を合わせ持っていた。さらに,FMN-PPy電極に可視光照射を行いながら,アノード分極を行ったところ,MeCN中のベンジルアルコールが選択的にベンズアルデヒドへ酸化されることが判った。このFMN-PPy電極は水溶性フラビン(FMN)をメディエーターとして含むため,反応中修飾電極からMeCN溶液中への拡散,脱ドープによるFMNの消失は殆ど観測されず,安定であった。 以上のように当初の予定どおり,均一系ならびに修飾電極系いずれにおいても効率の良い電子伝達システムが構築できた。
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