ポルフィリン-ビオローゲン連結化合物(ZPnV)とアラキジン酸を混合した単分子膜(1:10)をLB法によってITO電極にビオローゲン側から一層固定して修飾電極を作成した。犠牲的電子供与体としてトリエタノールアミンを加え、0.0vsAg/AgC1に設定して修飾電極に光照射(>400nm)とすると、安定なアノード方向の光電流が観測できた。この光電流のアクションスペクトルはLB膜中のポルフィリンの吸収と一致した。従って、この光電流はポルフィリン励起によって起こっている事が明らかになった。次に電解セルを電磁石中に置き磁場を印加(0.5T)すると、約15%の光電流の増加が観測された。この光電流増加率に対する磁場強度依存性はレーザーフォトリシス測定におけるラジカル対の減衰速度に対する磁場効果と同様に0.3T以上で一定になった。 以上より、ZPnVの修飾電極における光電流は主として分子内電子移動で生成した三重項ラジカル対によって起こる事がわかった。故に、この研究によってZPnVの修飾電極における光電流がビオローゲン分子を経由して起こっている事がはじめて実験的に証明された。また、磁場効果は溶液系と同様にスピン緩和機構が説明できることがわかった。 結論として、D-A対修飾電極における光電気化学反応に対する磁場効果がはじめて観測できた。また、この研究が(1)磁場と光を併用した電極反応の画期的制御法、及び(2)修飾電極における光電流の反応機構の解析方法になると考えられる。
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