シュウドモナスフルオレセンスTN5菌体をメディエーターを練りこんだカーボンペースト電極上に固定した微生物固定酵素機能電極は、微生物の資化因子であるニコチン酸に応答を示す。これは、メディエーターを介した菌体内酵素と電極間の電子移動が行われていることを意味する。使用するメディエーターとして、幾つかのベンゾキノン誘導体について比較検討した結果、2、6メチル置換ベンゾキノンが有効であることがわかった。しかし、限界電流値は、ベンゾキノンに比較しておよそ1.2倍程度であり、置換による顕著な効果はみられなかった。そこで、メディエーターには安価なベンゾキノンを用いることとし、カーボンペーストに練り込む量ならびに固定する菌体の必要量を見積もった。これらの値は用いる電極の形状や面積等に依存するが、本研究に用いた電極(幾何面積0.09cm^2)において、メディエーター含有量は3%(w/w)以上であればよく、菌体は60μg以上(乾燥重量)固定すればよいことがわかった。以下に、バッチセル方式にて、本電極の応答時間、選択性、最適温度、最適pH、安定性の評価を行った結果について簡単に報告する。1)応答時間と測定範囲:80秒程度(但し、電極の安定化等にかかる時間を含めると1行程あたり20分程度)、2)選択性:ニコチン酸に極めてよい選択性をもつ。(グルコース、エタノール、リンゴ酸、ニコチン酸類似化合物等に応答を示さない)3)最適温度:40℃(但し、45℃において失活)4)最適pH:pH8(但し、pH4以下、pH9以上において失活)5)2週間程度 本電極は長期安定性の面で問題が残るが、選択性に優れており、分析時間も比較的短時間で済むという利点がある。今後は、本電極のフローシステムへの適用を考えたい。
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