種々のβ-アミノ酸誘導体を合成するためのイミンの反応の一つであるイミノ・アルドール反応において、比較的弱いルイス酸性およびイミノ基との適度な親和性を有するランタノイド塩に着目し、イミノ・アルドール反応の触媒下への展開をはかってきた。本研究では、用いるイミンそしてケテンシリルアセタールの置換基の電子的または立体的効果、そして窒素原子とランタノイド金属との親和能力を考慮しながら、用いるランタノイド塩および反応条件について詳細に検討した。イソ酪酸エチルのケテンシリルアセタールと芳香族そして脂肪族イミンの反応において、ランタノイド塩として極めて入手容易な3価のヨウ化サマリウムを触媒量(10mol%)用いることにより、良好な収率で反応が進行し対応するβ-アミノエステルが得られることを見いだした。またプロピオン酸エチルのケテンシリアセタールとの反応では、良好な選択比で対応するβ-アミノエステルのanti体を高収率で得ることができ、特にシンナミリデンベンジルイミンとの反応によりanti体のみを得ることができた。また本反応における溶媒効果についても検討したところプロピオニトリルが収率および選択性に最も良好な結果を与えることを見いだした。一方、光学活性イミンとの反応において本反応のジアステレオ選択性について検討したところ、酒石酸由来のイミンにおいてはS:R=96:4、またマンデル酸由来のイミンではR:S=>99:1という極めて良好な選択比で対応するβ-アミンノステルを得ることに成功し、本反応の不斉合成における有用性を実証した。 上述したように3価のヨウ化サマリウムがイミンと適度な親和能力を有することを見いだし、イミノ・アルドール反応の触媒化に成功し、ルイス酸の触媒的利用による光学活性β-アミノエステルの合成が可能となることから有機合成極めて有用であることを明かにした。
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