研究概要 |
この1年間、ビスマス(III)塩を触媒とする新規合成反応について検討を行ったところ、以下に示す三つの有機合成上有用と考えられる反応を見いだした。以下にそれらについて詳述する。 1)Bi(NO_3)_3に触媒された空気酸化を利用するS,S-アセタールの脱保護 硝酸ビスマス(III)を触媒としてS,S-アセタールの脱保護を行ったところ、良好な収率で対応するカルボニル化合物を得ることに成功した。本反応は低毒性のビスマス触媒を用い、穏和な条件下、簡便な実験操作により達成された。またこの反応では、S,S-アセタールが空気酸化により開裂するという興味深い事実も明らかになった。 2)Bi(NO_3)_3-BiBr_3複合触媒系による有機硫黄化合物の選択的空気酸化 硝酸ビスマス(III)-臭化ビスマス(III)の複合触媒系が、スルフィドおよびチオールのスルホキシド、ジスルフィドへの選択的空気酸化に対し、有効な触媒となることを見い出した。酸素下もしくは酸素加圧下での酸素酸化反応は、近年多くの報告が見られるが、空気中での選択的酸素酸化は極めてまれな例と考えられる。 3)BiBr_3を触媒とするカルボニル化合物およびカルボニル化合物とアルコキシシランの還元的カップリング反応 触媒量の臭化ビスマス(III)とトリエチルシランの存在下、アルデヒド二分子、もしくはアルデヒドとアルコキシシランを還元的にカップリングさせることにより、対応するエーテル化合物が収率良く生成することを見いだした。また、本反応をホモオキサメタシクロファン類の合成に応用したところ、それらを単行程で収率よく合成することにも成功した。
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