本研究では多糖であるヒアルロン酸の側鎖に核酸認識部位を導入することにより、生体適合性・特異性を有する核酸アナログの開発を目的とした。 本研究において私は核酸塩基やヌクレオシド誘導体を核酸認識部位として用いた。具体的にはカルボキシルエチル、アミノエチル、ヒドロキシエチルチミンや5′-アミノ、5′-カルボキシルチミジンを用い、ヒアルロン酸側鎖に導入することについて検討した。核酸認識部位のヒアルロン酸への導入は活性エステル法などの高分子反応により行なった。 ヒアルロン酸のN-アセチル-D-グルコサミンのアセチル基をアルカリ加水分解によりアミノ基に変換した後、カルボキシルエチルチミンあるいはチミジン-5′-カルボン酸の活性エステル誘導体との反応により行った。 また、アミノエチルチミンあるいは5′-アミノチミジンを、ヒアルロン酸ならびにスルホニル化ヒアルロン酸に同様に活性エステル法を用いて導入した。 得られた誘導体のUVならびにCDスペクトルを用いて、その構造ならびにpoly(A)・poly(U)等のポリヌクレオチド類との相互作用について検討した結果、本研究により得られた核酸アナログは良好な水溶性を示すとともに、水溶液中において核酸塩基認識機能を有していることが明らかとなった。 さらにこの誘導体は良好な成膜性を示したため、核酸塩基認識機能を利用した核酸成分選択分離膜としての応用の可能性も見出した。
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