本研究では、液晶相形成能を有する主鎖骨格を持ち、そのグラフト側鎖に結晶性を有するような高分子鎖を導入した液晶性-結晶性グラフト共重合体について、その高次構造を三次元的に制御することができるという考えに基づき、合成から構造解析、機能解明を行うことを目的としている。 まず、側鎖の結晶性グラフト鎖の置換率や長さ、また主鎖の構造に依存して高次構造がどのように変化するかを検討するために、比較的長さの短い結晶性n-アルキル側鎖を持つくし形高分子であるポリアクリル酸エステルおよびポリメタクリル酸エステルについて、X線回折測定から得られる散乱プロファイルを詳細に検討した。その結果、固体試料の結晶-非晶層構造は側鎖の置換率によって変化し、その層間隔の値は、主鎖領域と側鎖領域の体積比によって正確に記述できることを見出した。このことから、主鎖骨格に垂直な方向の層構造が結晶性側鎖の置換率で制御することができることが明らかとなった。 また、主鎖が液晶相形成能を有する剛直なα-ヘリックス構造を持つ、ポリ(L-グルタミン酸 γ-ベンジル)の側鎖を、結晶性を有し比較的分子量の高いポリオキシエチレン鎖を交換した液晶性-結晶性グラフト共重合体の調製を、エステル交換法を用いて行った。その結果、反応の条件(時間、温度等)によって交換率を制御させることができ、側鎖の分子量および置換率の異なるグラフト共重合体を得ることができた。しかし、側鎖の分子量が大きいため、この合成法によりグラフト側鎖の置換率を15%以上に上昇させることは困難であることがわかった。
|