本研究では海水流動計算マルチレベルモデルをベースに、内湾の海水交換計算手法を開発することを目的として以下のような作業を行った。 (1)密度変化を含む海水流動の計算ができる多層モデルに、粒子追跡法の手法を組み込んだ。 (2)上記プログラムの検証のため、実海域での漂流ブイの追跡計算を行い、観測データと比較した結果、良好な結果を得た。 (3)海水交換率の評価については、まず現地観測データとの比較を行うために、塩分を指標とした海水交換率の計算プログラムを海水流動計算モデルに組み込んだ。 (4)上記プログラムの検証のため、特定の時期の実海域での流況再現計算を行い、現地観測データとの比較を行った。シュミレーションによって得られた海水交換率は現地観測から求められたものとほぼ一致し、流況、塩分濃度分布ともに観測データとよい一致をみせたことから、数値モデルを用いて内湾の海水交換率を評価することが可能であると結論を得た。 (5)上記プログラムを用いて、東京湾における夏季・冬季の海水交換率の計算を行い、東京湾においては夏季のほうが海水交換率が高く、その原因として成層構造が大きく寄与していることがわかった。 しかし、海水交換のより詳しいメカニズムについて考察するためには、塩分を指標とした海水交換率の評価では不十分で、粒子追跡法等による検討が必要である。
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