研究概要 |
本研究においてはカーボニックアンヒドラーゼ活性に必須な亜鉛イオンを欠乏させてイネ植物体を育成し、どの程度の葉内亜鉛濃度によって光合成速度やカーボニックアンヒドラーゼ活性に阻害があらわれるかを検討した。また安定同位体の炭素(13C)を用いた方法によって気孔,移動,固定の各過程の全抵抗に占める寄与率の変化をみると同時に気孔底、炭酸固定サイトの二酸化炭素濃度を算出し、カーボニックアンヒドラーゼ活性が炭酸固定にどのように影響しているかについて検討を行った。その結果、 1,葉内の亜鉛濃度が30%まで減少しないと光合成速度やカーボニックアンヒドラーゼ活性に影響はみられなかった。 2,亜鉛欠乏のイネではリブロースビスフォスフェートカルボキシラーゼ活性および含量が70%になるのに対して、カーボニックアンヒドラーゼ活性は16%まで減少した。 3,亜鉛欠乏によって固定抵抗が10%しか増加しなかったのに対し、移動抵抗は0.99から4.86mol^<-1>CO_2m^2secの5倍に増加した。その結果、全抵抗に対する移動抵抗の寄与率は4%から18%に増加した。 以上のことから、気孔底から炭酸固定酵素サイトまでの二酸化炭素の移動にカーボニックアンヒドラーゼが関与し、カーボニックアンヒドラーゼ活性の低下が、光合成速度に影響していると考えられた。
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