これまでの実験において、湿度条件を異にした条件下におけるイネ幼植物の茎葉部への乾物分配率(Y)は、測定開始1日目の茎葉部窒素含有率(X_1)と新規固定炭素量当たりの新規固定窒素量の比(X_2)との間に重相関関係が認められることを報告しており、Y=6.13X_1+96.2X_2+50.4の関係式を得ている。そこで、このような関係が環境条件を異にした場合にも成立するかどうか明らかにするため、光強度および通気CO_2濃度を異にした条件下で、イネ個体のCO_2収支、窒素吸収量および部位別窒素含有率の測定を行った。その結果、茎葉部への乾物分配率は、これらの環境条件を異にした場合においても、これまでと同様に高い重相関関係が認められ、Y=2.8X_1+70.3X_2+68.1の式が得られた。そして、得られた係数をこれまでの値と比較すると多少の違いは認められるものの、茎葉部乾物分配率を大きく変えるほどの違いはないものと考えられた。さらに、これまでに得られた測定値を全て(n=42)を用いて重回帰分析を行ったところ、同様に茎葉部乾物分配率には高い重相関関係が得られ、その回帰式はY=4.1X_1+71.1X_2+60.8となり、乾物分配の推定を行うための回帰式が改善されたものと考えられた。 また、温度条件を異にした場合の測定も同様に行ったが、1つの実験の光合成測定に2〜3カ月を要したことから、現在調査中となっている。そして、長期間における乾物分配の方向性の変化についての検討を行うため、大型同化箱を作成したが、予想以上に装置の完成に時間を要したため、実際に植物を用いた研究を行うまでに至らなかったが、この装置を用いて、乾物分配率の推定期間の調査を行えるものと考えられた。
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