C. boidiniiにおいて転写レベルでの遺伝子発現を追跡するために、レポーター遺伝子をプロモーター領域の下流に連結したプラスミドを持った形質転換体を作成し、誘導・非誘導などの条件でレポーター遺伝子の酵素活性を測定を行うことにより、簡便にプロモーター活性を追跡する方法を開発した。今回、Saccharomyces cerevisiae PHO5遺伝子をいくつかのペルオキシソームマトリクス酵素及び膜タンパク遺伝子のプロモーター領域に連結した結果、それらの遺伝子発現調節を、簡便にしかもコロニー上で評価できるようになった。 C. boidiniiをグルコース培地からメタノール培地へ移すと顕著なペルオキシソームの形成が認められ、マトリクス及び膜タンパクが、順序正しくペルオキシソームへ合成されていることを、ノーザン解析、ウエスタン解析、レポーター遺伝子による発現の追跡を行うことにより明らかした。その結果、これらの調節が、遺伝子発現のレベル、すなわちプロモーターのレベルで行われていることがわかり、遺伝子発現調節機構の存在が示唆された。これまでに本申請者は、C. boidiniiを用いた効率的な異種遺伝子発現系をアルコールオキシダーゼ(AOD1)プロモーターを用いて開発している。同様に、菌体内で大量に発現しているジヒドロキシアセトンシンターゼ(DHAS)、また細胞質酵素であるギ酸デヒドロゲナーゼ(FDH1)について、酵素活性、ノーザン解析、ウエスタン解析、レポーターシステムを用いることにより、これらのプロモタ-活性と発現調節について検討を加えた。その結果、特にFDH1プロモーターは、AOD1プロモーターに比較しても強力が活性を持っており、発現調節についてもAOD1プロモーターとは異なった調節機構を持っていることが明らかになった。
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