研究概要 |
放線菌Streptomyces azureusのプラスミドpSA1.1の染色体中の組込みに必須な遺伝子を含む1540bpの断片をクローニングし、本断片中に630bpの組込み遺伝子(int)、210bpの切出し遺伝子(xis),及び付着部位(att P)を同定した。本int遺伝子はSacchropolyspora erythraeaのプラスミドpSE211、pSE101やStreptococcus pneumoniaeのトランスポゾンTn1545、乳酸桿菌ファージphiLC3のインテグラーゼと高い相同性が認められた。また、xis遺伝子はpSE211やTn1545の他、Streptomyces ambofaciensのプラスミドpSAM2のイグシジョナーゼ等と相同性が認められた。更に、att Pの宿主染色体上の相同領域att Bを同定し、47bpにわたるコア領域が低G_+C含量であることを示した。これらの結果から、pSA1.1の染色体中への組込み機構を明らかにし、attP-int遺伝子を含む断片をpUC118ベクターにクローニングし、組込みベクターpINT7を構築した。 次に、int遺伝子を含むpSA1.1の1156bp SalI断片をtacプロモーターを保持した発現ベクターpGEX-5X-1に挿入し、組換えプラスミドpEXP10を構築した。pEXP10を形質転換したE.coli JM109株を、IPTG誘導によりグルタチオン-s-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質を発現させた。発現した融合タンパク質はSDS-PAGEにより分子量を測定し、約50kDaのGST-Int融合蛋白質であることを確認した。本融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製を行い、得られた標品をFactorXaによって切断した。精製したインテグラーゼとpSA1.1の各断片と反応させ、ゲル移動度シフトアッセイを行った結果、att P領域を含んだ断片のみに移動度の変化が認められ、インテグラーゼがatt P近傍のarmに結合してコア領域の切断・DNA鎖の再結合反応を触媒することが示唆された。
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