degRプロモーターのσ^Dの-10領域(GCCGATAT)をσ^A型に置換し、そのようなdegR-lacZ fusionを染色体上に持ち、さらに、染色体上のσ^Dの構造遺伝子を破壊し、degR-lacZがσ^Aでのみ転写されると考えられる菌株を作製した。この菌株でのdegRの転写開始点をprimer extension法で決定したところ、σ^Dによる転写の場合と同一の塩基から転写されていることを確認した。この菌株を用いて、pLC1のdegR遺伝子発現に及ぼす効果を調べたところ、pCL1の阻害は全く観察されなかった。またpLC1はσ^Dの構造遺伝子の転写を阻害しなかった。従って、pLC1はσ^Dの機能をpost-transcriptionalに特異的に阻害し、その結果degRの発現が抑制されることが明らかになった。 M. J. Chamberlinらはanti-σ^D factorを欠失させた菌株を樹立している(CB149株)。そこでdegR-lacZ fusionとpLC1をCD149株に導入し、pLC1の効果がこの株でバイパスされるか否か調べた。anti-σ^D factorの欠失はdegR-lacZの発現を4倍に増加させた。pLC1の存在下でのdegR-lacZ発現は野生株ではほぼ100%阻害されるのに対して、CB149株では、pLC1の存在下で38%程度の発現を示した。従って、degR発現抑制すなわちσ^Dの転写後調節は、部分的にはanti-σ^D factorを通じたものであることがわかった。しかし、100%にまで回復しているわけではないので、さらに、未知の因子が関与していると思われる。
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