「分子ピンセット」ライブラリーの作製およびこれらの「分子ピンセット」のDNA高次構造に及ぼす影響について研究を行ってきた。 「分子ピンセット」のDNA高次構造に及ぼす影響については、HUおよびそのミュータントタンパク質を用いて解析を行った。HUは2本鎖DNAに対して9bpに1分子の割合で結合し、DNAを約60度湾曲させる。HUが十分量存在すると、2本鎖DNAに結合したHUは相互にポリマー形成を行い、最終的に12分子のHUによって約110bpの2本鎖DNAに2回転のDNA超らせん構造(ソレノイド構造)が形成されることが明らかになった。したがって、「分子ピンセット」を細胞内で発現させ、DNA高次構造を変化させる場合、「分子ピンセット」とDNAの量比をコントロールすることによって、DNAの構造を何段階に制御出来る可能性が示された。 「分子ピンセット」ライブラリーの作製については、既に作製済みのHUミューウタント遺伝子(hupAN)のアーム領域(DNA結合ドメイン)にランダムペプチドをコードする合成オリゴDNAを導入し、ライブラリーの作製中である。予定よりも、ライブラリーの完成が遅れている理由の一つは、ライブラリーのクローン数が低いことであるが、これはクローンの中には大腸菌にとって致死的に働く「分子ピンセット」が多く存在しているのかもしれない。
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