枯草菌イノシトールオペロンの遺伝子構造と発現制御機構を明らかとするため以下の研究を行った。本オペロンはiolABCDEFGHIJの10個の遺伝子より構成されるものと推定され、またその上流に逆向きに存在する遺伝子がリプレッサー遺伝子iolRであることが分かっていた。 1.イノシトールオペロンのプロモーターの解析 イノシトールの添加により転写誘導される本オペロンのプロモーターとiolRのプロモーターを同定した。iolRはその下流のiolSと共に約2kbの転写産物として発現していた。 2.オペロンの転写終結点の同定 転写終結点をiolJ遺伝子の直後に同定した。この位置で終結する転写は本オペロンプロモーターからの転写であり、従って本オペロンは10個のiol遺伝子をコードする約11.5kbの非常に長い転写単位として発現していることが分かった。 (平成8年3月現在、以上2点に関する論文を執筆中である。) 3.IolRの認識するオペレーターの解析 大腸菌内でIolRを生産しDNase I foot printでプロモーターDNAとの結合を調べた結果、IolRは特異的にプロモーター領域に結合し約100bpもの長い領域をカバーする事が分かった。またDNA二重螺旋のほぼ1周期ごとに切断が増強された。IolRを精製し詳細な解析を試みている。 4.イノシトールオペロン遺伝子の機能解析 枯草菌のイノシトール分解系は未だ不明である。各遺伝子の機能を同定し分解系の詳細を明らかにする第一歩として10種の変異株の変異点を同定し、変異株の取れない遺伝子は遺伝子破壊を行った。これら変異株、破壊株を利用して各遺伝子の機能解析を進めている。
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