本研究は、イネにおける先在性抗菌物質・オリザライドの生合成前駆体ならびに初期生合成経路を追究することを目的とした. 簡便で再現性の良いオリザライド分析法を確立する目的で、HPLCおよびGC/MSの条件検討を行った.これを用いて、栽培イネ・コシヒカリ、および、同じイネ科植物であるトウモロコシ・ハニ-コーンとデントコーンに含まれるオリザライド類の分析を行った.その結果、コシヒカリの止め葉(最上位葉)からは4種の主要なオリザライドと生合成中間体と考えられるジケトン化合物が同定されたが、トウモトコシからはいずれの化合物も検出されなかった. 次に、生合成初期の中間体であると想定されるカウレン、イソカウレン、イソカウレン・エポキシドの重水素標識化合物を調製し、止め葉におけるオリザライドの内生量が高いイネ・農林27号の幼植物体(4週齢)に与えて変換実験を試みたが、オリザライド類への変換は検出されなかった. 現在、変換実験に適した植物体を選抜する目的で、数種のイネ品種の幼植物体について、内生するオリザライドおよび生合成中間体の分析をおこなっている.また、上記中間体への環化反応を検出するために、ゲラニルゲラニルピロリン酸およびコパリルピロリン酸の重水素標識化合物の調製も併せて行っている.
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