細菌に特異的なIgA抗体産生ハイブリドーマを得るためには効果的な経口免疫方法、および抗体価の測定方法の確立が必須であるため、まずこれらの点について検討した。免疫法としてBALB/cマウス(メス、8週令)に四種類のホルマリン固定した死菌、即ち大腸菌、ボツリヌス菌、サルモネラ菌、スタフィロコッカス菌を約10^<10>個/回/匹、一週間おきに3回経口投与した。あるいは、同様の経口投与を1回行った一週間後に、約10^<10>個/回/匹の死菌を不完全フロイントアジュバントとともに腹腔内免疫した。抗体価の測定にはELISA法を用いた。抗原として死菌、あるいは死菌を超音波破砕した懸濁液をそれぞれELISAプレートのウェルに固定させた。各経口免疫後、7日目の血清を緩衝液で希釈してウェルに分注し、抗原に結合したIgAの量をパーオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgA抗体とオルトフェニルエチレンジアミンの系で492nmの吸光値を測定することにより定量した。血清の他に、糞の緩衝液による抽出液、あるいは経口免疫後3日おきに摘出したバイエル板の細胞培養上清に含まれる特異IgA抗体の量を同様に測定した。経口投与のみで免疫を行った場合、血清中、糞中、パイエル板の細胞培養上清中、いずれにも経口免疫後、各細菌特異的IgA抗体価の顕著な上昇はみられなかった。これはマウスの腸管に多量に分泌されている自然抗体、および初回免疫で誘導された抗細菌抗体が逆に二次免疫による免疫応答を妨げているとも考えられた。そこで初回の経口免疫で感作された抗体産生細胞を腹腔内免疫により再刺激する方法を試みたところ、固体差はみられるものの有意なIgA抗体価の上昇がみられた。現在この方法によるIgA抗体の特異性を調べるとともに、細菌に特異的なIgA抗体産生ハイブリドーマの確立を検討している。
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