研究概要 |
材線虫病におけるエチレン生成と内部病微との関係を明らかにするために、まず接種苗における線虫の初期移動と内部病微の関係を詳細に検討した。その結果、線虫の移動経路が皮膚の樹脂道から放射樹脂道を通って木部に達すること、線虫の移動部位と初期病微の発生部とはよく対応することが明らかにされた。 ヒノキ漏脂病の病微進展とエチレン生成の関係を解析するために、石川県金沢市湯涌に試験地を設けた。漏脂病の発病時期と初期病微の詳細を明らかにするため、若齢の林分から2個体を選んで伐倒し、高さ10cm毎の樹幹断面における傷害樹脂道の形成状況を観察した。その結果、樹皮年輪から推定した傷害樹脂道の形成時期および形成位置は、年を追って樹幹上部へと広がる傾向があること、および樹幹下部ほど樹脂道形成が激しく、1年輪に2層以上にわたって形成されることが漏脂病の特徴であることが明らかにされた。 このような、激しい傷害樹脂道形成におけるエチレンの役割を明らかにするため、湯涌の激害林分から、健全木2本と激害木3本を選び、それぞれの病患部でない部位の樹皮の一部を切り取ることにより傷害を与えた。その後、時期別に傷害部の直上部から樹皮を採取し、新たに形成された樹脂道を観察した。また,1995年8月に健全木3本と激害木4本にコルクボーラーで傷を付け、ガラス管を取り付けて、傷害部から発生するエチレンをトラップした。その後2時間毎にガラス管内の気相を採取し、携帯用GCであるエチレンアナライザーで分析した。その結果、傷害樹脂道は12月〜3月には形成されず、6月までに師部年輪最内層に数列形成された。また、被害木の生成するエチレンは、健全木に較べて著しく多かった。このことから、傷害に対してエチレンを大量に生成する個体は、傷害樹脂道形成および樹脂の生産が過剰となり、漏脂病を発症するのではないかとの仮説を得た。
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