研究概要 |
木材は粘弾性材料であり,その破壊の様相は時間による依存性が極めて高いものとなる。従って,木材の疲労破壊機構を解明することは,柱や梁などの構造用材料としての信頼性をさらに高めるためには重要な課題である。本研究では,木材の疲労破壊における亀裂の発生,開始,進展の微視的破壊の形態変化をAE法により検討し,木材の疲労破壊機構を形態学的に明らかにするとともに理論(力学)的に検証することを目的として以下の知見を得た。 1.亀裂は負荷方向にほぼ垂直に階段状に進展して最終破断に至った。その過程において亀裂は,仮道管の末端,壁孔など組織上の不連続点でその進展を拘束されることが確認された。 2.AEは,突発的に発生する段階とほとんど発生しない段階とを交互に繰り返しながら発生するが,ほとんど発生しない段階は亀裂の進展が一時拘束される時期とほぼ一致することが明らかとなった。 3.peak load AE(最大引張応力時に発生するAE)とbottom load AE(最大圧縮応力時に発生するAE)とが明確に分離できた。bottom load AEは試験の初期段階で発生が頻発したが,bottom load AEの発生数が多いほど破壊までの繰り返し数は少なくなる傾向を示した。 4.繰り返し波形および応力レベルによるAEの発生特性を検討したところ,正弦波より矩形波の方が発生しやすいこと,および,応力レベルが大きい方が単位繰り返し数あたりの発生数が多いことがそれぞれ分かった。 5.1サイクル毎のエネルギ損失とAEの発生頻度との間には正の相関が認められた。すなわち,木材の疲労破壊過程で発生するAEの特性を力学的に検証することができた。
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