Botryococcus brauniiは群体性の微細緑藻であり、世界中の様々な気候の地域における分布が報告されており、時には大規模なブルーミングを形成することが知られている。また、この緑藻は乾燥重量の数10%におよぶ大量の液状炭化水素を生産することも知られており、エネルギー源としての利用が考えられている。この緑藻の大量培養による燃料生産を考える際、問題の一つとなるのは培養後の収穫法であるが、ろ過による収穫が経済的であると考えられる。また、生産された炭化水素の大部分は、群体を形成する細胞間マトリックスに蓄積されるため、効率の良い炭化水素生産を行うためには堅固な群体を形成させることが不可欠である。B品種に属する日本国内で分離されたYayoi、Kawaguchi-1、Kawaguchi-2株およびアメリカで分離されたBerkeley株につき、収穫時における群体の安定度を顕微鏡で観察した。培地中には窒素源として硝酸カリウムを400mg/lの濃度で添加し、2%の炭酸ガスを含む空気を通気して培養を行った。いずれの株も培養開始後約40日後に定常期に入ったので、20μmのメッシュサイズのプランクトンネットを用いてろ過による収穫を行った。その際Berkeley株では全ての藻体がプランクトンネット上に留まったが、Kawaguchi-1、2株ではろ液へ若干の藻体の流出が認められ、Yayoi株ではかなりの流出が認められた。ろ液を顕微鏡で観察したところ、Kawaguchi-1および-2株では、2〜4細胞からなる小型の群体が流出していたのに対し、Yayoi株では多数の単細胞化した藻体が流出していた。これらのことから、同一の条件で培養を行っても群体の安定性は異なっており、株による相違が存在することが示唆された。また、群体を喪失した藻体では炭化水素含量は低かった。
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