野菜産地の産地間競争が激しくなるにつれて、青果物出荷主体である県経済連、単協の販売戦略の成否が、青果物産地の発展、維持に大きく影響するようになってきている。しかし、全国的に名の知れた銘柄産地であっても、日々の製品の分荷作業は実際の販売担当者が経験や「勘」に基づいておこなっているのが実状である。これは、販売担当者の交替や販売戦略の変更を困難にするものと考えられ、分荷に関する意思決定支援システムの開発が急務であると考えられる。 青果物の分荷作業では、販売額最大化、危険分散、長期的安定的な取引など様々な要因を考慮に入れなければならない。これは特定の制約下における最適化の問題と考えることができる。本研究ではこの意思決定を支援するエキスパートシステムを開発するために重要な推論エンジン部分の検討を課題とした。そのアルゴリズムとして相互結合型ニューラルネットワークを用いるが、通常のアルゴリズムではアナログ値の出力が得られない。そこでこれに改良を加えた。分析対象としては鳥取県大栄町の大栄スイカに注目した。1995年の日別出荷データをもとに規格、等級別の最適な分荷をシステムに出力させ評価を行う。 分析の結果、「なじみ」や「格」のある市場に対する一定の量的質的出荷を果たしつつ、販売額実績値が約5千万円/日にたいして、リスクをおさえつつさらに増額が見込める分荷結果を得ることに成功した。また、販売目標金額を増額するにつれリスクが増加する結果が得られた。現状では出力結果に不安定な点もあるなど、改良しなければならない点は多々あるが、分荷担当者の参考指標としては十分な内容であると考えられ、エンジン部分の手法は確認できたと考えられる。
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