1.室内融雪実験 制御された条件下で融雪現象を再現し、積雪の密度、含水率、溶存イオン濃度などの基礎的な物性値の変化を把握するために、室内実験装置を自作した。本実験装置により、直径20cm高さ40cmの円筒形の積雪サンプル3個を、同時に並行して任意に加熱冷却することが可能となった。均質なしまり雪を用いて行った試験的な実験では、融解・再凍結の繰り返しに伴って、積雪イオン濃度が積雪サンプル上層で次第に低下し、下層で上昇している現象が把握され、積雪内を溶存イオンが選択的に流下していることが確認された。 2.シミュレーションモデル これまでに野外観測により測定された実測データを用いて、積雪の溶存イオン濃度の鉛直プロファイルを動的にシミュレートするシミュレーションモデルを作成した。本モデル内では積雪は何層かの層に分けて表現され、各層間での熱、水、溶質の移動が計算される。単位計算時間ステップは15分で、1991年、92年の2積雪期について、根雪となる前の12月から消雪まで連続して計算を行った。その結果、積雪のぬれ密度および塩素、硫酸イオン濃度の鉛直プロファイルの計算値は、実測値をよく再現した。しかし積雪の硝酸イオン濃度の鉛直プロファイルについては、実測値に見られる特定層でのピークが計算値によって再現されなかった。シミュレーションを行うことにより、積雪の透水係数、水分拡散係数、溶質拡散係数を、積雪の含水率とかわき密度の関数で表すことができ、これらの積雪の物性値が積雪の変態に応じてどのように変化しているのかについての知見が得られた。また、融解・再凍結に伴った、積雪内の融雪水中への溶存イオンの濃縮の程度についても考察された。
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