<研究目的>農業用ダムはフィルタイプを主としているが、内部侵食による漏水の問題を抱えているものが少なくない。この原因多くはハイドロリックフラクチャリング(水理破砕)によることが定性的には明らかにされつつあるが、不明確な点が多い。本研究では実際に漏水を生じているフィルダム(大谷内ダム)を対象として、水理破砕の発生過程を調べるとともに漏水の原因について検討した。 <研究方法>室内実験では現実の条件を再現しにくく、定量的には不明確な点が多い。そこで、水理破砕を人工的に発生させるための装置を作成し現場実験を行った。また、ダムの堤体及び基礎中に亀裂が発生する条件を調べるために、引張試験を含めた力学的特性の測定を現場から採取した試料に対し行い、それをもとに有限要素法による築堤解析を行った。 <結果>現場水理破砕実験により、亀裂の生じる水圧及び閉じる水圧の存在を確認するとともに、亀裂が引張により発生していることが分かった。 大谷内ダムで採取した試料を用い、非接触型磁気変位計により微小ひずみレベルでの測定を行った結果、微小ひずみレベルでの引張側と圧縮側の弾性係数はほぼ等しく、不撹乱土の引張強度は圧縮強度の1/5〜1/4程度となった。また、撹乱土の限界伸びひずみは不撹乱土の3〜6倍となり不撹乱土で亀裂が生じやすいことが明らかになった。 <結論>三軸試験等で得られたパラメーターを用いて築堤解析を行った結果、築堤が先行して行われた基礎部分において強度を越えた盛土荷重が作用していることが分かった。また、この部分では側方の拘束が弱く荷重により限界を越えた伸びひずみが生じ鉛直に亀裂が生じ、土圧より大きい貯水圧により水理破砕の発生したこと漏水の原因と考えられる。
|