研究概要 |
植物の生育は、過去から現在まで与えられた環境の蓄積を使って説明できる事が多い。コンピュータを用いた施設園芸の環境制御システムおよび圃場の気象観測システムでは、過去から現在までの環境計測データが記録されている。そこで、この環境計測データの有効活用を図り、その場所における植物のローカルな生育モデル作成を対話的・試行錯誤的に行う目的で、積算環境計測値に基いた生育モデル作成支援システムを開発した。 システムは、オブジェクト指向プログラミングとGUIとが可能なVisualWorks Smalltalkを用いて開発した。環境と生育との関係を実測・推定したデータを使って、時々刻々の環境計測値を生育値に変換し、それらを線形・非線形関数でひとつの生育値に合成し、それを積算することで、実際的な植物生育モデルの構築を可能にした。さらに、横軸に時間、縦軸にその時間までの積算値として図示し、実測した植物の時間-生育曲線に合致するようにスケーリングすることで、環境計測値から植物生育値を推定可能にした。そして、東海大学実験温室の温室環境計測制御システムを動作試験に用い、本システムとLANで接続してデータ交換した。 システムの各要素は、それぞれ、1個のウインドウとして表現された。このシステムを使用して、栽培温度条件の異なるホウレンソウの有効積算温度を調べ、播種後d日目のh時のTd, hから、播種後n日目の1株あたりの地上部生体重FWnを求めるモデルを作成できた。さらに、例えば、光と温度に関してモデルを考え、本システムですぐに試してみることも可能であった。生産現場に設置されている環境計測システムに本システムを接続することによって、その栽培条件での生育モデルを構築し、収集された環境計測データを生育の予測・評価に利用でき、植物生育まで拡張した実用的な環境計測制御システム構築に寄与すると考える。
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